4つ組神経衰弱の紹介

この記事は「数学ゲーム Advent Calendar 2018」9日目の記事です。

こんにちは、わんどです。 普段は数字について考えたり、コードを書いたり、謎解きを作ったりしてます。

今日は、5年前に作った4つ組神経衰弱を紹介します。 その前に、ネタ元のドブルの話から。

ドブルの話

ドブルとは、2009年に発売されたボードゲームで、 8種類の絵柄が描かれたカードを順番にめくっていき、 共通する絵柄を見つける反射神経ゲームです。

可愛い見た目ですが、組み合わせ理論のカークマンの女学生問題に着想を受けて数学者が作ったゲーム、 (もっと正確に言うと、そのゲームに影響を受けたゲームデザイナーとその数学者が作ったゲーム)で、

どの2枚のカードにも共通する絵柄がただ一つ存在するという特徴を持っています。

ドブルの性質については以下のブログで詳しく語られています。

カードゲーム ドブル(Dobble)の数理 https://amori.hatenablog.com/entry/2016/10/06/015906

一般化の話

ドブルでは1枚のカードに8種類、全部で57種類の絵柄が描かれており、 57枚のカードを構成できるところ、なぜか2枚のカードが抜かれて55枚で発売されてます。

一般に1枚のカードに書かれている絵柄の数をnとすると 構成できるカードの枚数と種類の数は n2 - n + 1となります。

一般化の話

具体的な構成としてはn = 3の時

(1 2 3)
(1 4 5)
(1 6 7)
(2 4 6)
(2 5 7)
(3 5 6)
(3 4 7)

n = 4の時

(1 2 3 4)
(1 5 6 7)
(1 8 9 10)
(1 11 12 13)
(2 5 8 11)
(2 6 9 12)
(2 7 10 13)
(3 5 9 13)
(3 6 10 11)
(3 7 8 12)
(4 5 10 12)
(4 6 8 13)
(4 7 9 11)

また、他の組み合わせも、これらの数字の置き換えで構成することができます。

数字の置き換え用スクリプト https://gist.github.com/wand125/8545387 https://ideone.com/9pXiRk

n = 4の時、13種類でトランプのランクの数と同じになります。 1枚のカードに13のランクが4つずつ書かれている、 圧縮版トランプと言えるかもしれません。

このカードを使って、4つ組神経衰弱をすることを考えます。

Quadruplet ルール

ゲームの目的

  • 伏せられたカードの中から、同じ数字が書かれている4枚のカードを引き当てる

ゲームの準備

  • 場に13枚の4つ組カードと、13枚の数字タイルを用意します。

ターンの開始

  • カードを1枚ずつめくっていきます。
  • 2枚目のカードをめくったタイミングで、共通する数字が1つあります。

  • 3枚目にめくったカードにその数字が書かれていれば、4枚目のカードをめくります。

  • 4枚目のカードにもその数字が書かれていれば場の数字タイルを取得し、ターンを終了します。

  • 3枚目、4枚目にめくったカードに、1,2枚目のカードに共通する数字が書かれていなければ、 その時点でターンを終了します。

ターンの終了

  • カードを伏せて、次のプレイヤーの手番に移ります
  • 神経衰弱と違い、タイルを取っても取らなくても、次のプレイヤーへ手番を回します。
  • また、場のカードの枚数はゲームを通して変化しません。

細かいルール

  • 2枚目をめくったタイミングで、共通するカードのタイルが既に存在しない、 もしくは1枚目をめくったタイミングでどの数字のタイルも存在しない場合、 その時点でターンを終了します。

ゲームの終了

13枚すべてのタイルがなくなった時点で獲得したタイルの数の多い人を勝者とします。

ゲーム性

  • 初期状態で、1ターンでめくられるカードが最低3枚なので、 3-4人プレイで一周すればほとんどのカードの中身を目にすることになります。

露骨に記憶力で差がつくゲームになりそうですが、 メモリースポーツプレイヤー同士の戦いでなければ、 忘れてしまっても何度も覚え直す機会があるので意外となんとかなります。

ゲームを遊んでみて。

一番簡単な覚え方としては、 一つ数字を決めて、その数字の含まれたカードが開かれた時に場所を覚えるのが良いでしょう。 慣れてくると、2つ、3つと増やしていくことができそうです。

自分の前の手番の人が同じ数字を覚えようとしていた場合 潰されて無駄になるので、相手がどの数字を覚えようとしているのか読んで、 その数字を避ける、などの心理戦が発生しました。 一度に1つの数字しか覚えていなくても、 他人と違う数字を覚えていれば戦えるという点で 神経衰弱より戦略性が高い記憶ゲームと言えるかもしれません。

1枚目をめくったタイミングでターンを終了する「ドボン」は まさか起こらないかと思っていたけれども、やってみると何度か発生しました。 中盤以降は禁止カードを覚える、 後半は残っているカードを覚える、と ゲームの序盤と中盤、後半で覚え方が変わっていくのが楽しい。

また、数字の書かれたカードのペア、トリオの単位で覚えていくことになるので、 数字を覚えるというより共通する配置の形を覚えるようになったので、 エッジではなくノードを覚えていくような、組み合わせ理論を感じることができました。 この辺りも、色々な覚え方ができそうです。

ゲームの欠点

カードの種類が13枚しかないので、 カードの組み合わせを覚えてしまうと 52個の数字を覚えるゲームから、 13枚のカードを記憶すれば良いだけ のゲームになってしまいます。

欠点を解消するには 毎回違うカードを使う、1回きりとして遊ぶ、 電子ゲーム化するなど。

現状、遊びには耐えうるが、ボードゲームとして市販は厳しく 自宅でのみ遊べる幻のゲームとなっています。

まとめ

戦略性や、心理戦が発生するように進化した神経衰弱の可能性を掘りたい気持ちがありますが、 突き詰めようとすると結局メモリースポーツの方向に人類が進化してしまうのが難しいかなと思ってます。 戦略性+記憶というと、カウンティングが発生するタイプのゲームなどが考えられますが、 この辺りも数学ゲームとして、可能性がありそうですね。

また、「圧縮トランプ」の可能性も探りたいところです。 ここまで読んでくださってありがとうございます。


明日は、「サイコロコロンブスの卵」作者のkurodataroさんです。 「サイコロコロンブスの卵」は以前ゲームマーケットで購入しました。 拡張でタワー表記があるのが素敵。

楽しみです。